サステナブル経営が必要な理由とは?CSVとCSRの違いについても解説
近年「サステナブル経営」「CSV経営」といった用語を耳にする機会も多いのではないでしょうか。
昨今の企業経営においては、利益の追求のみならず社会への貢献性も重視されるようになっています。
本記事では、企業が取り組むべきサステナブル経営やCSV経営とは何かを解説したうえで、それらを実践することによって得られる企業にとってのメリットや、具体的な実践方法についてご紹介します。
サステナブル経営とは?
サステナブル(Sustainable)とは、日本語で「持続可能性」ともいわれます。
サステナブル経営とは、企業が環境、社会、経済という3つの視点から持続可能性を重視し、長期的な価値をつくる経営手法のことです。環境への負荷を最小限に抑えながら、社会への貢献と企業の収益性の確保を同時に目指すことを目的としています。
しかし、日本におけるサステナブル経営に対する取り組みは、欧米諸国と比べると遅れを取っているとも言われています。
特に欧州では積極的に推進が行われており、EUが企業によるサステナブル活動の情報開示をルール化するなど、サステナブル経営は世界的にも、企業経営において欠かせない要素の一つとなっています。
CSV経営とは?
CSVの考え方
CSV(Creating Shared Value)は、企業が社会課題の解決を通じて、企業としての利益や競争力を生み出していく経営手法のことです。
2011年にハーバード大学ビジネススクールのマイケル・ポーター教授によって提唱され、事業を通じて社会問題を解決することで創造される「社会価値」と、その事業により生み出される企業の利益「企業価値」の両方を高めることが重要と考えられています。
環境、社会、経済への持続的な価値創造を目指すサステナブル経営の考え方に対し、CSVは社会課題の解決こそが企業活動の本質であり、それらを通じて利益を生み出すべきという、より社会課題の解決に重きを置いている点に違いがあります。
CSVとCSRの違い
CSVとCSRはともに、企業経営の中で環境や社会課題に配慮する点で、サステナブル経営の考え方の一つです。
CSR(Corporate Social Responsibility)は、「企業の社会的責任」ともよばれ、企業による環境問題や社会課題への取組みのことを指します。かつて2000年代~2010年代にかけて広く普及した考え方で、その活動の中にはボランティア等の利益に直結しない社会貢献活動も含まれます。
近年においても、CSRの考え方は多くの企業で取り入れられています。
しかし、2011年にCSVが提唱されて以降、利益に必ずしも繫がらない活動を含むCSRよりも、社会貢献と利益の追求を同時に両立させるCSVの考え方は、新しいビジネスの手法として一層高い注目を集めているとも言えます。
CSV経営が注目される背景
CSV経営が注目されるに至った大きな理由の一つに、SDGsの普及があります。2015年に国連サミットでSDGsが採択され、政府だけでなく企業にも、環境・社会・経済の問題に対処する責任が求められるようになりました。
環境問題や高齢化社会など、世界全体で取り組むべき問題が数多く存在し、これらは企業経営においても無視できない状況にあります。その結果、既存の事業をSDGsに結びつけたり、これに関連する活動を展開する企業が増加し、その結果としてCSV経営への関心が高まっています。
CSV経営に取り組むメリット
CSV経営に取り組むことは、企業がそのイメージ向上や社会的な課題への積極的な貢献、また新たな技術や知識の獲得など、さまざまな利点があります。
企業評価の向上
CSV経営のメリットの一つに、企業イメージやブランドの向上が見込める点があります。
環境や社会課題解決に取り組むことは、企業の信頼性を高め、社会的な評価が上がることにもつながります。また、それらのイメージの向上により競合他社との差別化や、新規顧客の獲得も期待することができます。
社会課題解決への貢献
近年の企業運営においては、単なる利益追求だけでなく、社会問題の解決にも積極的に参加することが世界的に求められています。
製品やサービスの提供を通じて利益を創出しながら、同時に社会的な課題に取り組むことで、企業は環境や社会に貢献することができ、これは大きな魅力とされています。
新技術や知識の獲得
社会的課解決に向けた活動を通じて、新たな技術や知識の獲得につながる可能性があります。
近年では、自社だけでは対応できない新技術の導入など、企業同士が協業して取り組む事例も増えています。企業同士の関わりが増えることで、新しい事業活動や事業発展の契機になることも大きなメリットの一つです。
CSV経営における問題点
CSV経営の課題の一つとして、1社だけでは社会問題の解決が難しいことが挙げられます。社会問題に対処するには単一の企業だけでは限界がある場合が多く、他の機関や政府、他社と協力して全体的なアプローチが求められます。
また企業の中には、既存の事業を環境問題や社会課題を結び付けることで、強引にCSV経営やSDGsを謳っているといった事例もあります。
これらは本質的な社会課題の解決には結びつかないうえ、CSV経営に対する理解の混乱を招きかねないことから、正しい知識を持ってCSV経営に取り組むことが社会的に求められています。
CSV経営における3つのアプローチ
提唱者のマイケル・ポーター教授によると、CSVの実践には以下の3つのアプローチが重要とされています。
- 「製品と市場を見直す」
- 「バリューチェーンの生産性を再定義する」
- 「企業が拠点を置く地域を支援する産業クラスターをつくる」
※出典:中小企業庁「第3節 社会価値と企業価値の両立」
1. 製品と市場を見直す
新しい商品やサービスを通じて社会的な課題を解決し、それにより社会価値と企業価値の両方の創造を目指すものです。このアプローチでは、単に新しい商品やサービスを生み出して課題解決を図るだけでなく、企業が新たな市場を開拓し、市場を拡大することで、社会価値と企業価値の両立を達成することも目的となります。
2. バリューチェーンの生産性を再定義する
企業が自社のバリューチェーンを見直すことで、社会価値と企業価値の両立を目指すものです。具体的な見直し項目としては、「エネルギーの利用とロジスティックス」、「資源の有効活用」、「調達」、「流通」、「従業員の生産性」、「ロケーション」などが挙げられています。
3. 地域を支援する産業クラスターをつくる
産業クラスターとは、地域の企業や団体・支援機関等によって形成されるネットワークのことです。関連する産業が集まることで、技術やノウハウを相互活用し、各社の強みや地域の資源を活かした事業の創出が可能となります。また、これにより企業間の協業が促され、地域の活性化だけでなく、生産性の向上や社会的課題解決につながる技術の開発を促進することが期待できます。
※出典:経済産業省「産業クラスター施策の概要」
CSV経営を実践するには
CSV経営においては様々なアプローチ方法がありますが、ここでは環境課題の解決に向けた実践方法について解説します。
カーボンフットプリントの削減
カーボンフットプリント(CFP)とは、製品やサービスのライフサイクル全般(原材料調達から廃棄・リサイクルまで)で排出された温室効果ガスの量を、CO2の総量で表示することを指します。
環境課題の側面において、CO2排出量の削減は非常に重要度の高い取り組みです。
CSV経営においてCO2排出削減を実現するためには、バリューチェーン全体をLCAの観点で捉え、カーボンフットプリントの削減を目指していくことが求められます。
環境ソリューション技術の活用
環境課題の解決に向けたCSV経営においては、自社の製品や技術だけでは実現が難しい場合もあります。そこで、環境ソリューション製品や技術を導入し、自社の事業における課題解決(利益創出)を行いながら環境課題の解決を目指すという方法もあります。
具体的な環境ソリューション技術の一例として、自社で排出するプラスチックごみを圧縮機によりコンパクト化し、運搬回数を少なくすることで、物流コストを削減しながらトラックによるCO2の排出を軽減するといった手法があります。
さらに別の例としては、プラスチック廃棄物を排出元で燃料に変えることができる小型のリサイクル設備を導入し、ごみを直接熱エネルギーに変換して自社の燃料として活用するといった事例もあります。
これにより、プラスチックごみの輸送にかかるコストやCO2を削減できるだけでなく、本来使用するはずだった燃料分のCO2量も同時に削減が可能となります。
このように、自社の利益を創出しながら環境負荷の軽減を目指すことは、環境課題解決や地域貢献にもつながり、企業のブランドイメージの向上や他社との差別化といった効果も期待できます。
まとめ
本記事では、サステナブル経営とCSV・CSRの重要性を解説し、実践のための具体的な手法について紹介させていただきました。
サステナブル経営においては、持続可能性と社会的課題への取り組みを企業の事業活動に適切に組み込んでいくことが重要です。
企業が社会との共生を目指す新しい経営モデルが求められる中、これらの実践に向けたアプローチを正しく理解することは必要不可欠となっています。
サステナブル経営の特徴を理解し、各ステークホルダーとも連携しながら、まずは自社に最適な取り組みから実践していきましょう。
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