プラスチックをその場でエネルギーへ!ごみを出さない新しいリサイクルの形とは

エルコムの画期的なリサイクルへの取組み

今、海洋プラ課題解決のためのパートナー連携を強める株式会社エルコムは、「誰一人取り残さない」というSDGsの理念のもと、使用済プラスチックが発生する現場・地域でプラスチックが一つもゴミにならない世界の実現を目指しています。

全ての人が安全・身近にアクセスできる分散型資源循環システムを構築し、プラスチックを効率的に資源に変えるリサイクルの仕組みづくりに力を注いでいます。

目次

プラスチックごみ問題の背景

プラスチッaクが浮遊する海

プラスチックごみの問題は他人事ではありません。

例えば、私たちが日々使っているプラスチックがごみとなり、それらが海などに流れ出してしまうと、海洋プラスチックごみとなります。そこで細分化されたマイクロプラスチックは、海中で魚などの体内に蓄積し、私たちの体内に入り、地球上のすべての人々の健康を脅かす恐れがあります。

日本近海のマイクロプラスチック濃度は、なんと世界平均の27倍(※1)とも言われています。
このように、近年ではプラスチックリサイクルがよく聞かれる日本においても、プラスチックごみ問題は深刻となっているのです。

一方で途上国においても、プラスチックごみの問題は深刻です。

先進国のプラスチックごみが、リサイクルという名目でマレーシアなどの東南アジア途上国に送られており、現地住民たちへの健康被害が大きな社会問題(※3)にもなっています。

プラスチックごみの山

プラスチックごみ問題への対策と世界の動き

バイオプラスチックの開発

現在、世界ではさまざまな脱プラスチックの動きが進んでいます。

例えば代替素材として、近年ではバイオマスプラスチックや生分解性プラスチックが開発されています。
しかし、それら代替素材の国内流通量の0.4%(※2)にしかすぎず、例えその技術が確立しても、プラスチックの自然界への流出を抑制するものではありません。

プラスチックは私たちの生活には欠かせないもので、全てのプラスチックの使用を完全にやめることは難しいのが現状です。

プラスチックはそれ自体が悪いものなのではなく、使い終わったあとゴミとなって不適切に廃棄されてしまうことに問題があります。そのため、プラスチックを使用した後には適切な処理やリサイクルが必要不可欠となります。

プラスチックごみの3つのリサイクル方法

プラスチックのリサイクル

プラスチックのリサイクル方法には、主に3つの種類があります。

マテリアルリサイクルプラスチックごみを材料として再度別のプラスチック製品に作り変える方法
ケミカルリサイクルプラスチックごみを化学的に分解して原料として再利用する方法
サーマルリサイクルプラスチックごみを燃料に変えて熱エネルギーとして再利用する方法

皆さんも、外で食事や買い物をするときに「廃プラスチックを再利用して作られた〇〇」という製品を目にしたことがあるのではないでしょうか。

「マテリアルリサイクル」「ケミカルリサイクル」では、使用済みプラスチックから新しい製品や原料を生み出すことができるため、新たなプラスチックの生産を抑えることができるというメリットから近年多くの企業や団体が取り組みを進めています。

一方で、それらのリサイクル手法においては原料となる廃プラスチックを運搬する工程や、原料を熱で溶かす工程で多くの燃料やエネルギーを消費するほか、CO2の排出なども発生することから、地球環境への負荷という面ではデメリットもあります。

プラスチックリサイクルへのエルコムの画期的な取組みとは?

では、これらの問題を解決していくにはどうしたらよいのでしょうか?

エルコムでは、プラスチックごみを燃料として効率的にエネルギーに変えることができる独自の「サーマルリサイクル」の技術を提供しています。

当社は2007年から関係省庁と連携しながら、日本沿岸に流れつく漂着プラスチックの有効利用に向けた取り組みを進めてきました。

そして、プラスチックごみを小型樹脂ボイラで燃料に変え、温水や蒸気として利用できる独自のサーマルリサイクル技術「e-PEPシステム」を開発しました。

e-PEPシステムの全容説明

このシステムは、プラスチックごみの処理や運搬にかかる環境負荷を最小限に抑えながら、プラスチックごみを熱エネルギーに変えることができます。プラスチックリサイクルのためにエネルギーを消費するのではなく、プラスチックから直接エネルギーを生み出すことができるのです。
 

「e-PEPシステム」誕生の背景

私たちエルコムは、次世代の子供たちのために地球と人が共存する~Earth & Life Communication~を理念に1991年に創業しました。

2000年以降から日本での環境への意識の高まりと同時に、廃棄物の運搬にかかる環境負荷を抑える様々な減容機の開発を行ってきました。

その頃、海洋プラスチックはあまり知られていない問題でしたが、日本の沿岸では漁業用の使用済み発泡フロートが流れ着き、目を疑うような光景が広がっていました。

使用済み発泡フロートの山


減容して埋立てするだけでは限界があるため、ごみとなったプラスチックに温存する高いエネルギーを有効に安全に利用することができないか。その発想から開発を始めたのが「e-PEPシステム」です。

使用済プラスチックや漂着プラスチックを地産地消の新エネルギーに変えることにより、処理・運搬・埋立て・焼却など今までかかっていた莫大な処理コストや環境負荷を最小に抑え、地域の資源循環を加速化させ、地域産業に付加価値を与えることができると考えました。

その開発は決して容易ではなく、特に海水にさらされた発泡スチロールのクリーン燃焼は、小型な燃焼炉では不可能とも言われました。しかし諦めずに開発を続けた結果、約10年の開発期間を経て、ついに独自のクリーン燃焼システムを確立しました。 

「e-PEPシステム」の他にはないメリットと削減効果

「e-PEPシステム」は、2015年9月の国連サミットで持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)が決議された翌年に完成。2016年5月の環境展でリリースを行いました。

日本では、既に大型処理施設で廃プラスチックからサーマルリサイクルが行われていますが、そのエネルギー変換効率はわずか20%ほど。

当社の「e-PEPシステム」の小型樹脂ボイラは、プラスチックごみ100%から成型された燃料チップやペレットを安全にクリーン燃焼させて、70%の高い効率でエネルギー変換ができます。

さらに、発泡スチロールのみではなくポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの複合材や混合プラスチックを含む使用済プラスチックの分散型エネルギー利用が可能です。

e-PEPシステムの省エネ効果説明


発生させたエネルギーは、温水または蒸気として既設のボイラに干渉なく接続が可能なため、プラスチックごみを燃料化した分、既設ボイラの燃料使用を削減して省エネを実現します。

バイオマスボイラと比較してのメリット

ボイラ形態として近いものとしては、木質のチップやペレットを燃料とするバイオマスボイラがあります。
バイオマスの場合は、森林を伐採して燃料をつくりますが、同等の植樹を行うことでカーボンオフセットを行っています。

一方で「e-PEPシステム」の小型樹脂ボイラの場合は、地域や企業内でこれまで廃棄していたプラスチックを燃料として、既に使われているボイラ設備の補助熱源にします。

そのため、トータル的に樹脂ボイラの燃焼によりCO₂が増えることはなく、従来の燃料を削減した分のCO₂とこれまでに廃棄運搬、焼却処分にかかっていたCO₂を大幅に削減します。

e-PEPシステムの燃料やCO2削減効果

「e-PEPシステム」1年間の経済的・環境的効果

このシステムを1年間フル稼働させた場合、年間100トンの廃プラスチック発生を抑制し処分コストを削減、年間9万リットル相当の代替燃料となり化石燃料の使用を削減する効果があります。

さらに、最小ループのエネルギー利用により、LCA(ライフサイクルアセスメント)の観点から、年間最大290tCO₂の温室効果ガスの発生を抑制します。これは、杉の木約2万本が吸収する1年間のCO₂量に匹敵します。

e-pepシステムによる削減効果

「クリーンオーシャンプロジェクト」

現在「e-PEPシステム」は、漂着プラスチックの処理に悩む自治体や、使用済プラスチックの有効利用に取り組む漁業組合、流通小売業などでの運用が開始されています。

e-pepシステム画像.png

それと同時に、当社では2050年までにプラスチックの100%の有効利用を目指す「クリーンオーシャンプロジェクト」を発起して、約20のアライアンス企業や団体とともに海洋プラスチックの発生抑制と持続可能な分散型資源循環システムの仕組みづくりに取り組んでいます。

クリーンオーシャンプロジェクト2050


海洋プラスチックの問題解決には次の3つのアプローチが必要不可欠です。

一つ目は「プラスチックを流出させないこと」。
二つ目は「漂着プラスチックを再流出させないこと」。
そして三つ目が「海中のプラスチックを回収すること」。

これらすべてにアプローチし問題を解決するためには、そのアクションに対して経済的付加価値の創出が不可欠であり、さまざまな企業、団体、関係機関との連携が必要です。

当プロジェクトはこれまでに第5回ジャパンSDGsアワード特別賞、環境省のプラスチック・スマート優良事例アワードを受賞。各所から大変栄誉ある評価をいただいており、今後もこの活動にご賛同いただける企業様・団体様からのご参加を引き続き募っております。

クリーンオーシャンプロジェクトSDGアワード受賞
第5回ジャパンSDGsアワード授賞式の様子

クリーンオーシャンプロジェクト 紹介動画:

さいごに

プラスチックが一つもゴミにならない世界へ

プラスチックごみ問題の解決に向け様々な取り組みを進めているエルコムですが、これはまだまだ序章にすぎません。

私たちが目指すのは、誰一人取り残さない、プラスチックが一つもごみにならない世界

そのために技術をイノベーションへと発展させ、自治体とその地域の基幹産業、参画する民間企業の技術を集結して取り組みの輪をさらに広げ、プラスチックがごみにならない世界を目指して今後も活動を続けていきます。

※1 出典:WWFジャパン 海洋プラスチック問題について(2018) https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/3776.html
※2 出典:環境省 バイオプラスチック導入ロードマップ(2021)https://www.env.go.jp/content/900534511.pdf
※3 出典:NHK あなたの知らないプラスチックの行方 https://www.nhk.or.jp/gendai/comment/0019/topic019.html

エルコムの画期的なリサイクルへの取組み

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