プラスチックのマテリアルリサイクルとは?プロセスやメリット、課題を詳しく解説

近年、プラスチックのリサイクル手法として注目を集める、マテリアルリサイクル。

「名前は聞いたことがあるけれど、実際にどんなものなの?」という疑問をお持ちの方も多いのではないのでしょうか。

本記事では、マテリアルリサイクルの内容やメリット、具体的なプロセス、抱えている課題について詳しく解説します。

目次

マテリアルリサイクルとは?

マテリアルリサイクルイメージ

「マテリアルリサイクル」とは、使用済みのプラスチック製品を廃棄物として捨てずに、新たな製品へと再生させるリサイクル方法です。

マテリアルリサイクルは、環境保護の観点から、限りある資源の再生循環という面で多くのメリットがあると言われています。

プラスチックのマテリアルリサイクルを行うメリット

資源を効果的に活用できる:

 マテリアルリサイクルにより、廃棄されたプラスチック製品は新たな製品に再生されます。これにより、プラスチックの寿命が延び、資源の再利用が可能となります。
また、新しいプラスチックを生産するために必要な原油等の天然資源の消費が削減され、環境負荷の低減が期待できます。

廃棄物の削減ができる:

マテリアルリサイクルにより、プラスチックごみの排出量の削減が期待できます。これにより、廃棄物の処分にかかる問題を軽減でき、埋め立てや焼却に伴う環境への負荷が低減します。

プラスチック製品の持続可能性の向上:

マテリアルリサイクルは、プラスチック製品の設計段階から持続可能性を考慮する契機となり、再生可能な材料などの新技術の開発を促進する契機になることが期待されます。

マテリアルリサイクルのプロセス

マテリアルリサイクルのプロセス

プラスチックのマテリアルリサイクルは、以下の工程で行われます。

  1. 収集・分別:
    ごみとして排出されたプラスチック製品は、市町村の収集システムやリサイクルセンターにより集められます。その後、ボトル、容器、フィルム、パッケージなど、種類ごとに分別されます。
  1. 清浄と破砕:
    分類されたプラスチックはそれぞれ洗浄され、汚れや不純物が取り除かれます。
    その後、破砕され、小さな粒子になります。この段階で色々な種類のプラスチックが混合され、再生用のフィードストックが作られます。
  1. 再生:
    フィードストックはマテリアルリサイクル工場で再生プロセスにかけられます。これにより、再生プラスチックが生成され、新たなプラスチック製品の原料となります。
  1. 製品化と販売:
    再生プラスチックは新たな製品に加工されます。例えば、新しいペットボトル、フィルム、家庭用品、建設材料など、その用途は多岐にわたります。その後製品は市場に供給され、新たなプラスチック製品として利用されます。

マテリアルリサイクルの分類と事例

マテリアルリサイクルにはいくつかの種類があり、また多くの企業・団体が様々な方法で取り組んでいます。

マテリアルリサイクルの分類

マテリアルリサイクルの分類

プラスチックのマテリアルリサイクルは、いくつかの方法で分類できますが、主に以下の2つのカテゴリに分けられます。

レベルマテリアルリサイクル

レベルマテリアルリサイクルは、同じ種類のプラスチックを集め、洗浄、粉砕、再生して同じ製品に戻す方法です。

例えば、ペットボトルからペットボトルを再生することがこれに該当します。この方法は、プラスチックの品質を保ちつつ、原料として再利用できることにメリットがあります。

ダウンマテリアルリサイクル

ダウンマテリアルリサイクルは、プラスチックをより低い品質の製品に再利用する方法です。例えば、使用済みのプラスチック製品から、建材やパッキング材料などの低品質な製品に転用することがあります。品質の低下が許容できる用途に適していますが、高品質な製品の再生に比べると環境への貢献度は低くなります。

小見出し2: マテリアルリサイクルの事例

【事例1】リサイクルペットボトルの導入:

ある飲料メーカーでは、飲料のペットボトルに使用するプラスチック原料に再生プラスチックを一部使用しています。また、自販機横のリサイクルボックスで回収した使用済みボトルを、新しいペットボトルの原料としてリサイクルするための取り組みも行っています。

【事例2】再生素材で作られた電子機器:

ある電子機器メーカーでは、製造する製品全体にリサイクル素材の利用を拡大しています。機器本体からパッケージに至るまで、あらゆる素材のリサイクル素材への代替を進めており、最終的には再生素材または再生可能素材のみを使用した製品づくりを目標に掲げています。

【事例3】再生プラスチックを素材とした衣料品:

アパレル業界でも「エコ」や「リサイクル」への注目が高まっています。
一部の企業は、使用済みプラスチックボトルを収集し、これを再生して繊維に変えたリサイクル素材を使用して衣料品を製造しています。このような取り組みは、今日のファッション業界において、世界的にも広く導入されつつあります。

マテリアルリサイクルの課題

マテリアルリサイクルのスプーン(イメージ)

一方で、プラスチックのマテリアルリサイクルにはいくつかのデメリットや課題も存在します。

プラスチックの品質低下

プラスチックは素材の性質上、異なる種類のプラスチックが混ざったり、不純物等が混合してしまうと品質の低下が起こりやすくなります。

プラスチックごみはさまざまな種類が混在しており、きれいに分離することが難しいため、再生プラスチックは新品と比べて品質が劣ることがあります。一部の用途では品質の低下が許容されないため、新品プラスチックの使用が選択されることもあります。

経済的な課題とコスト

マテリアルリサイクルは環境への貢献が期待できる一方で、経済的な課題も抱えています。実施には、収集、分別、クリーニング、再加工などの工程が必要となり、これらの運用コストは新品のプラスチック製造に比べて高くなる場合があり、コスト増加にもつながります。

環境への負荷と影響

マテリアルリサイクルの環境への負荷(イメージ)

近年では、マテリアルリサイクルは「環境に良い」「エコな取り組み」という風潮が根強くある一方で、実際に環境に与える負荷や影響についてはあまり語られないことが多く、正しい理解が進んでいない側面もあります。

排出物やエネルギー消費の発生

マテリアルリサイクルにおいては、素材の一部のみがリサイクルに回され、その他は通常の廃棄物となってしまうこともあります。これらの廃棄物については通常の処理工程が必要となるため、一概に廃棄物をなくせるとも言いがたいところがあります。

また、マテリアルリサイクルの工程は複雑で多岐にわたり、電力や燃料などのエネルギーが必要となります。場合によっては新品のプラスチックと同等以上のエネルギーを必要とすることもあり、結果的に環境への負荷を増加させる可能性があります。

二酸化炭素(CO2)の排出:

マテリアルリサイクルにおける再生プラスチックの生成には、専用のリサイクル工場での加工が必要となるため、多くのプラスチックごみが中国や東南アジアをはじめとした工場へ船や飛行機で送られます

そのような長距離の運搬にあたっては化石燃料が使われ、大量の二酸化炭素(CO2)が排出されるため、一概に環境負荷の低減に役立つとは言いがたい側面もあります。

マテリアルリサイクルの課題を解決するには

プラスチックボトルと木

以上から、マテリアルリサイクルは新しいプラスチックの生産を減らすという面ではメリットがあるものの、環境負荷の低減という意味では必ずしもベストな選択肢とは限りません

環境負荷の低減を目指すには、目的に合ったリサイクル方法を選択することも大切です。

業態により効果的な選択肢は異なりますが、環境負荷低減のためには、化石燃料等のエネルギー消費量を減らすこと、二酸化炭素(CO2)の排出量を減らすことが大きな鍵となります。

そのためには、大量の燃料やエネルギーを消費する「モノからモノへ」のリサイクル方法だけではなく、燃料やエネルギーの消費を最小限に抑えた、「モノから直接エネルギーへ」のリサイクル方法への発想の転換も必要になります。

「モノから直接エネルギー」のリサイクルとは

近年では、プラスチックごみを燃焼して熱エネルギーに変え、温水や蒸気として利用できる小型ボイラなどの製品も開発されています。

特に、プラスチックごみを大量に排出する業種では、多くの運搬費用をかけCO2を排出しながらリサイクル工場へ運ぶよりも、排出元で直接エネルギー回収ができることから、環境負荷を最小限に抑えられるクリーンなエコシステムとして注目度が高まっています。

このように、プラスチックのリサイクルにおいては環境負荷の低減など、複数の側面からのメリット・デメリットを考慮しながら、持続可能な資源利用を推進することが必要不可欠です。

まとめ

プラスチックと女性

マテリアルリサイクルは、使用済みのプラスチックをもとに新たな製品を作ることから、地球にやさしいエコな取り組みというイメージが社会的にも強くあります。

しかし、その工程では多くの天然資源やエネルギーが使用されるということを念頭に置き、正しい理解をもってリサイクルの取り組みを進めていくことが重要です。

リサイクルの本質である地球環境負荷の低減という目的を明確に持ち、正しいリサイクル方法を選択しながら、持続可能な社会の実現に向けて取り組みを進めていくことが求められています。

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マテリアルリサイクルイメージ

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