漁業系プラスチックごみの現状と問題点とは。具体的な取組み事例についてもご紹介

海岸に漂着する漁具(漁業系プラスチックごみ)

海洋プラスチックごみ問題は、地球規模で深刻化しており、特に漁業系プラスチックごみはその主要な一因となっています。これらは海洋生態系に深刻な影響を与えるだけでなく、漁業者自身にとっても大きな課題です。

本記事では、漁業系プラスチックごみの現状と課題を整理し、その解決に向けた取り組みや具体的な事例を紹介します。海洋環境を守りつつ、持続可能な漁業を実現するために、私たちができることを一緒に考えてみましょう。

目次

漁業系プラスチックごみの現状

海岸に漂着した大量の漁具(漁業系プラスチックごみ)

近年、世界中で問題となっている海洋プラスチックごみ。
そのうち漁業由来のごみは、世界中で年間約115万トンも排出されていると言われています。

漁業系プラスチックごみの主な種類と発生源

漁業系プラスチックごみは、主に漁具や漁業活動で使用される素材が原因で発生しています。代表的なものには漁網、ロープ、発泡スチロールの浮き(ブイやフロート)などがあります。
これらは漁具としての再利用が難しい場合も多く、漁業者側での処理が経済的な負担となって、結果的に処理されずに放置されてしまう事例が多発しています。

漁業系プラスチックごみによる環境への影響

漁業系プラスチックごみにより、海洋生物が漁網やロープに絡まる事故や、プラスチックの誤飲により命を落とす事例が増加しています。このように海の生態系や漁業活動に与える影響だけでなく、プラスチックを含んだ魚介類を人間が食べることでの人体への影響も懸念されています。

(出典)水産庁「漁業における海洋プラスチックごみ 問題をめぐる状況と対策

漁業系プラスチックごみ問題の課題

漁業系プラスチックごみ問題とは(イメージ)

漁業関係者が直面する漁業系プラスチックごみの課題

最も大きな課題の一つは、プラスチックごみの処理にかかるコストです。
回収・処理するためには大きなコストと労力がかかるほか、一度流出してしまった漁具は海流に乗り、広範囲にわたって漂流するため、回収が難しくなります。

また、漁業者がこれらの廃棄物を回収・処理するためのインフラが整っていない地域も多く処理に関する規制や支援が不足していることが、漁業関係者にとっての大きな負担となっています。

漁業や経済における漁業系プラスチックごみの影響

漁業にも直接的な被害が報告されています。
海洋に浮遊するプラスチックごみが漁船の航行に影響を与え、漁獲物に混じるなどの支障が生じています。これらは漁業資源の品質低下にもつながりかねず、地域経済への影響も懸念されています

これら課題解決のため、漁業系プラスチックごみの削減と効果的な回収・処理システムの構築が急務となっています。

世界と日本における漁業系ごみの流出防止策

漁船

このような現状を受け、世界の関連機関や日本においては以下のような対策が講じられています。

国際機関における漁業系ごみの流出対策

FAO国連食糧農業機関

2018年、「漁具マーキングのための自主的ガイドライン」を策定。
2023年、「漁具マーキングのマニュアル」、「漁具のマーキングに関するリスクアセスメントを実施するためのフレームワーク」を策定。

IMO国際海事機関

2022年、海洋環境保全委員会(MEPC78)において、漁具マーキングの義務化、漁具流失時の報告の強化が合意。また現在、MARPOL 条約附属書 V 及び関連ガイドラインの改正案の協議が継続して行われている。

RFMO地域漁業管理機関

カツオ・マグロ類や底魚類の管理を行っている国際機関において漁具マーキングや漁具流失の報告が義務化等の規制が強化。

プラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際文書(条約)

国連環境総会(UNEA)において、2025年を目処にプラスチックの国際的な規制やルールについて新たな条約を策定することが決定。

(出典)水産庁「漁業における海洋プラスチックごみ 問題をめぐる状況と対策

日本における海洋ごみ対策の関連法案

海洋プラスチックごみ対策アクションプラン

環境省では2019年に「海洋プラスチックごみ対策アクションプラン」が策定されました。
このアクションプランでは、経済活動を制約するのではなく、廃棄物処理による回収・流出防止、イノベーションによる代替素材への転換等によってごみ削減を目指すことを呼びかけています。

(出典)環境省「海洋プラスチックごみ対策アクションプラン

      

プラスチック資源循環促進法

2022年4月から施行されたプラスチック資源循環促進法では、製品の設計・製造から販売、排出・回収・リサイクルに至るまでのあらゆるライフサイクルにおいて、プラスチック資源循環の取組みを求めています。

主に「3R + Renewable」を原則としており、Reduce(リデュース・減らす)Reuse(リユース・再利用)、Recycle(リサイクル・再資源)、Renewable(リニューアブル・再生可能資源に切替)の4つの項目の推進が目標として掲げられています。

(出典)環境省「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律の普及啓発ページ

漁業系プラスチックごみ問題への取組み事例

漁業者自らがごみを資源化・リサイクルする取組み(広島県)

牡蠣養殖で知られる広島県では、年間に約3万個のプラスチック製廃フロートを始め、多くの漁業系プラスチックごみが排出されています。

そこで広島県漁連は2024年11月、漁業系プラスチックを再資源化できるプラントを導入。長年問題視されていた養殖用の使用済みプラスチックを漁業者自らがペレットやチップに再資源化し、地域での循環利用を可能にする新たな取組みを開始しました。

広島県漁連では、プラスチックごみから作られたペレットやチップを、県内施設のボイラーの燃料やリサイクル原料として提供することを計画しています。

これは、本来は処理にコストがかかるプラスチックごみに燃料や資源としての新たな用途を生み出しごみの排出者だけでなく地域経済にも付加価値を与えるWin-Winの取組みであると言えるでしょう。

(参考リンク)
PR TIMESプレスリリース「漁業系プラスチック問題に終止符 広島発・瀬戸内海の資源化プロジェクト開始
NHK広島「かき養殖いかだの浮きを燃料に 漁業の“リサイクル”施設完成
TBS NEWS「かき養殖のプラスチック廃棄物 再資源化のプラントが稼働 海洋プラごみを燃料に

おわりに

豊かな海洋環境を守り、次世代に豊かな海を引き継ぐためには、企業、漁業者、自治体、そして消費者が一体となって海洋プラスチックごみの流出防止に取り組む必要があります

小さな行動でも、多くの人が協力することで大きな成果を生むことができます。ぜひ、プラスチックごみのリサイクルや適切な処理、資源循環へ向けた取組みを通して、持続可能な社会の構築へつなげていきましょう。


プラスチッククリーンエネルギー化システム 「e-PEP」とは?

e-PEPシステムとは、使用済みプラスチックをその場で燃料化し、そのままエネルギーとして利用できる全く新しいエコリサイクルシステムです。

事業者が排出したプラスチックごみを発生元でリサイクルすることで、廃棄物処理にかかるコストやCO2排出を抑えながら、ごみを出さずに環境保護にも貢献します。

詳細・カタログは以下のページからご覧いただけます。また、お見積はエルコム公式サイトよりぜひお問合せください。

海岸に漂着する漁具(漁業系プラスチックごみ)

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