プラスチックのケミカルリサイクルとは?プロセスやメリット、課題を詳しく解説
ケミカルリサイクルは、使用済みプラスチックを有効に活用するリサイクル手法として注目を集めています。
本記事では、ケミカルリサイクルの内容やメリット、具体的なプロセス、抱えている課題について詳しく解説します。
ケミカルリサイクルとは?
ケミカルリサイクルは、使い終わったプラスチックを化学的に分解し、製品の原料などに変えることで再利用するリサイクル方法です。
ケミカルリサイクルでは、プラスチックを原料である化学物質に戻してから再度プラスチックとして再生することができます。そのほか、液体燃料やガス等のエネルギー資源、塗料・接着剤・樹脂等の化学製品など様々な用途での使用が可能です。
ケミカルリサイクルのメリット
プラスチックのケミカルリサイクルには、以下のような利点があります。
資源を有効に活用できる
使用済みプラスチックを化学工業用の原料に再生することができるため、資源を有効に使うことができ、新たな天然資源を節約することが可能です。そのほかにもガスや油など、様々な用途に再生可能なことから、資源の活用の幅が広いことも大きなメリットです。
マテリアルリサイクルよりもCO2排出量の削減が期待できる
ケミカルリサイクルはエネルギーを必要とするものの、マテリアルリサイクルによる再生プラスチックの製造に比べて二酸化炭素(CO2)の削減効果が高いとされています(*1)。
例えば、ケミカルリサイクルのうち75%を占める手法では、廃プラスチックを「コークス」という燃料に変えます。天然資源である石炭の代わりにコークスを燃焼させることで、エネルギーとして再利用できるため、CO2の削減効果が期待できます。
(*1)出典:東京都環境局「廃棄物と資源循環 > プラスチック製容器包装」
ケミカルリサイクルの事例
では、ケミカルリサイクルでは具体的にどのような製品が作られるのでしょうか。その具体的な事例を紹介します。
油化
廃プラスチックを高温で加熱し、無酸素環境で分解して、熱分解油やナフサなどの液体炭化水素に変えます。これらの液体は、化学工業の原料として使用され、新たな製品の原料となります。油化は異種素材や不純物を含むプラスチックを処理する際に有効です。
ガス化
廃プラスチックを高温で加熱し、ガス(気体)化させる方法です。生成されたガスは、エネルギー源として利用されたり、化学工業の原料として活用されます。
コークス・高炉化学原料化
廃プラスチックをコークス炉で燃焼・分解し、化学工業原料に転換します。具体的には、熱分解ガスやコークスとよばれる原料が生成されます。
また、高炉原料化では、廃プラスチックを鉄鉱石の還元剤として機能させることで、鉄の製造に利用することも可能です。
原料化・モノマー化
廃プラスチックを化学的に分解して、元のプラスチックの原料や分子(モノマー)に戻します。再生されたモノマーは新しいプラスチック製品の製造に使用されます。これにより、循環的なプラスチック生産が可能となります。
ケミカルリサイクルのプロセス
プラスチックのケミカルリサイクルは、以下の工程で行われます。
- 収集・分別:
ごみとして排出されたプラスチック製品は、市町村の収集システムやリサイクルセンターにより集められます。その後、ボトル、容器、フィルム、パッケージなど、種類ごとに分別されます。
- 前処理:
分類されたプラスチックはそれぞれ洗浄され、汚れや不純物が取り除かれます。その後、粉砕や破砕などの工程を経て、材料を加工するのに適切な状態にします。
- 分解と再生:
適切に前処理を施された後、高温での分解や、化学的な処理による分解が行われます。その後、燃料して再生されたり、再生材料や化学物質の原料になります。
- 製品への再利用:
分解された材料や化学物質は、新しい製品の原料として再利用または再加工されます。これにより、新しい製品が作られ、廃棄物の削減と資源の有効活用が可能となります。
ケミカルリサイクルの課題
一方で、プラスチックのケミカルリサイクルにはいくつかのデメリットや課題も存在します。
コストが高額である:
ケミカルリサイクルは、特定の環境で複雑な化学プロセスが必要となるため、設備の建設・運用に多額の資金が必要です。また、リサイクルまでの工程が複雑なため、運営コストが高くつくことがあります。新しいプラスチックを生産するよりも高い初期投資が必要となる場合もあり、経済的な負担になる可能性があります。
複雑なプロセスが必要である:
ケミカルリサイクルは、プラスチックを分解し、元の原料やモノマーに戻す複雑な工程から成ります。高温、高圧などの環境条件下で行われるため専門的な技術が必要となり、専用のリサイクルプラントなどの施設も必要となることから、参入のハードルが高いというデメリットがあります。
工程によっては多くのエネルギーが必要:
ケミカルリサイクルの一部の工程では、多くのエネルギーが必要です。特に高温環境下でのプラスチック分解はエネルギー消費が高い傾向があります。これにより、環境に対するエネルギーの影響が懸念されます。また、再生材料を生産するために新しいエネルギー源が必要となる場合もあり、再生にかかるエネルギーコストが高くなります。
ケミカルリサイクルの課題を解決するには
したがって、ケミカルリサイクルは資源の有効活用やCO2削減の面ではメリットがある一方で、コストや設備投資の面では課題も多いのが現状です。
リサイクルへの取り組みには、コストの面や設備の導入しやすさなども重要な選択肢の一つとなります。
近年では、プラスチックごみを燃焼して熱エネルギーに変え、温水や蒸気として利用できる小型ボイラなどの製品も開発されています。
特に、プラスチックごみを大量に排出する業種では、多くの運搬費用をかけCO2を排出しながらリサイクル工場へ運ぶよりも、排出元で直接エネルギー回収ができることから、環境負荷を最小限に抑えられるクリーンなエコシステムとして注目度が高まっています。
このように、プラスチックのリサイクルにおいてはコストや設備面・環境負荷の低減など、複数の側面からのメリット・デメリットを考慮しながら、持続可能な資源利用を推進することが必要不可欠です。
まとめ
ケミカルリサイクルは、使用済みのプラスチックをもとに新たな製品を作ることから、地球にやさしいエコな取り組みというイメージが社会的にも強くあります。
しかし、その工程では多くのコストや複雑な行程があり、多くのエネルギーが使用されるということを念頭に置き、正しい理解をもってリサイクルを行っていく必要があります。
リサイクルの本質である「地球環境負荷への低減」という目的を明確に持ち、正しいリサイクル方法を選択しながら、持続可能な社会の実現に向けて取り組みを進めていくことが重要です。
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